2020年2月8日土曜日

6年生最後の試合



 決勝戦、試合開始1分、3連続シュートが決まったところで、カン高くブザーが鳴った。相手がたまらず取ったタイムアウトだった。いい出だしだった。この大会は5人いる6年生で闘うと決めていた。今日の15時10分の試合開始時刻に選手と、そして親たちのピークを持って行きたいと逆算して考えていた。ベンチに帰ってきた選手を見ると、まだ1分なのに息が上がっていた。「今日は集中できている」と私は手応えを感じた。6分間の第1Qが終わると得点は18−4だった。今シーズンのベストの6分間だった。

私は6年生に何を伝えることができるのかと、6年生最後の大会に入る前から考えていた。地区大会なので対戦相手の手の内はお互いわかっていた。どうやって勝つかの戦術はあえて持たなかった。それは、前の大会の失敗があったからだった。大会の前に星澤先生に来ていただき「パス」を教わった。これで行こうと決めてロングパスを取り入れると、試合のテンポが自然と速くなった。あとはシュート。6年生にはミニバスにはないが、3ポイントシュートを試合で決めるというテーマを与えた。試合前の練習は、5メン、パスの練習、5対5、シューティングにした。木下さんのチームと1時〜6時まで延々5対5をやったあたりからチームの雰囲気が変わっていった。

前半が終わったところで27−17、10点リードしていた。ハーフタイムで自信満々の選手たちに「このまま終わらないよ」と言い聞かせたけれど、自信の方が勝っていた。3Qが終わったところで35−32。さっきまでの笑顔はなかった。ここからがバスケットの面白いところだ。最後の6分間をどう過ごすかだった。

選手たちは、自分たちより体の大きい相手と闘って疲労が見えていた。でも私は6年生を替えるつもりはなかった。第4Q残り5分、逆転された。想定内だった。残り4分、わがチームの大黒柱のキャプテンが相手のスクリーンプレーで倒れたところでタイムアウトを取った。予定より1分早いタイムアウトだった。私は試合前のミーティングで選手たちに、「3分1Qとして8Qあると思って試合をしよう」と伝えていた。「3分たったらタイムアウトを取るから、いい流れもそうでない流れもあるからそれを考えながらプレイしよう」と伝えていた。

キャプテンがベンチに帰ってくると大声で泣いた。体と体のぶつかり合いでメンタルまで削られていた。今年のチームはキャプテンのメンタルで持っていた。試合前のミーティングで「チームのいいところは何かな?」と聞くと、キャプテンが「チームワーク」と言った。ちゃんとチームになっているんだと感心した。キャプテンを交替させるしかなかった。キャプテンには「まだ4分あるからまた行くよ!」と言った。笛が鳴った。わがチームの小さなエースの4つめのファイルの笛だった。えぇ、私は、このゲームを台無しにしたくなかった。他の6年生も動きが短調になっていた。もうタイムアウトは使えないので、思い切って疲れの見える6年生を2人替えた。残り1分半、コートには復活したキャプテンと今日はシュートタッチのよかったセーフティと4ファイルの小さなエースと2人の5年生で逆転し3点リード。残り47秒で笛が鳴った。6年生2人をコートに戻し、勝も負けるも6年生5人に任せた。1ゴール入れられ1点差になった。もうベンチからは何もすることができない。6年生5人で相手の怒涛の攻撃を凌いてゲームセット。6年生は1点差でミニバス最後の試合を勝利した。

私は6年生にバスケットを通じて何を伝えることができたのだろか。星澤先生がいらしたときに「体と体がぶつかり合うスポーツ、バスケットボールは人生そのものだ」という話をされた。私も小学生時代からバスケットボールを経験し、今に至るまで、まったくその通りだと思っていた。試合が終わり、表彰式も終わり、帰る前の反省で「バスケットボールは人生そのものだ」という話を12歳の女の子たちに話した。ミニバスで経験したことを人生に活かしてくれたら、こんなうれしいことはない。

最後に、この大会私は、私の3人の息子たちの憧れの選手だったコービー・ブライアント選手のパーカーを着てベンチに入りました。コービー選手ありがとうございました。バスケットボールは人生そのもの!